正義をどこに見るか。映画「シン・仮面ライダー」
実は何を隠そう、仮面ライダーを見るのはこれが初めてである。
仮面ライダー、いや、仮面ライダーシリーズというべきか。
特撮物をほとんど見ない家庭で育ったため、この作品はこの年齢になって改めて刺激を与えてくれる作品となった。
そう、特撮物を見た経験が少ないため―爆発シーンなどもあまりよく見たことがなかった私にはどのシーンも、アクションも十分に見応えがあるものだった。
特に、ライダーキックというものを初めて見たが、あれはかなり、相当に美しいものである。
確かに子供の心を鷲掴みにするだろう。例外もなく、私も見た瞬間ため息をついた。素晴らしい。
初代仮面ライダーをよくは知らないのだが、藤岡弘氏演じる本郷猛という人物は相当に情熱があるキャラクターだったように記憶している。
しかし、今回の本郷猛は違った。
己の内面を見つめ、内省的であり、常に正義とは、と問うキャラクターだった。
人を愛し、人のために闘う、という点は歴代のライダーらしさを十二分に引き継いでいると思う。
本郷猛を通して、優しさとは、人間らしさ、倫理とはどこにあるのかを黙考させていただいた。
TVシリーズでの仮面ライダーを見たことがなかったことが功を奏し、独特の、感情がやや冷めたような台詞回しも新鮮に思え、ヒーロー独特のソレを感じさせた。
今作ではややグロ表現とも言える表現が多用されており、しかし、だからこそ主人公の心に共感が生まれた。
ショッカー=悪の軍団だった昔とは異なり、それぞれがそれぞれに思い描く「人間の幸福とは」「正義とは」について淡々と、しかしながら情熱的に語りかけてくる作品であった。
子供ながらに描いていた「善VS悪」という構図ではないため、これはやはりこの部分も大人向けと言えるかもしれない。
正義とはそれぞれの中に存在し、また、わかりあえない場合もあるということも描かれていた。
そして、わかりあえなくとも大切な存在がある、ということも丁寧に描かれていたように思う。
ストーリーは至って単純で、重要な登場人物も少なく、話はとても理解しやすかったように思う。
ただ、淡々と敵幹部と闘っていくだけなので、これは意見が二分するのかもしれない。
演出も斬新だなと思ったが、ここも意見を二分させる要因の一つだろう。
全体を通して、TVシリーズなどのように軽快に見るものではなく、「思考して」見るものとなっていたように思う。
子供向けの要素を取り去ったことで、かなりダークな部分が見える映画だったように思う。
だが、それがよかった。
とても見やすかったし、感じやすかった。
感想もそれぞれの手に委ねられた感がある映画だった。
造形美といい、一度は見たほうがよい作品だな、と思った。
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