【本】読了。東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』
混乱した。
私は大いに混乱した。
ろくにタイトルを見ることなく読み始めた本。(いつもタイトルは後から振り返って見たりする)
大好きな東野圭吾氏の本というだけで手に取った。
実に混乱をよく描いた本だった。
冒頭で「なーんだ、恋愛モノか」と舐めた考えで読み始めて、その違和感に気づいた。
主人公は誰なのだ。
前章とこの章では中身が入れ替わっているのか?
いや、そうではない。
東野圭吾氏の本というのは、いつも美しい旋律を奏でるような、どこか儚いものを読むことが多かった。
しかし本作はどうだろうか。
まるで重低音の効いたハードロックのように、脳内を強く叩きつけるようだ。
混乱は終盤まで続いた。
あまりに混乱するので、私はタイトルを見返した。
そしてそこにあった。
『パラレルワールド・ラブストーリー』
と。
そう、本作はパラレルワールドだ。
混乱しながらもその作品に吸い込まれていく自分。
どうにかしてこの混乱を治めようと、ページを行ったり来たりしながら読み進めた。
読めば読むほどわからなくなり、わかった気になり、やはりまだわからない。
最終章になるまで、何がどうなっているのかは把握できなかった。
これは作者の術中に完全に陥ったと言えるだろう。
東野圭吾氏がニヤリと笑うのが見える。
そう、東野圭吾氏がただの恋愛モノを書くはずがなかったのだ。
それは複雑怪奇で、ミステリなのかサスペンスなのか。
本作はまたしても科学を根拠にしていたが、いつものような世の中への疑問の提起は社会問題、というより精神問題であったような気がする。
『自分』とは何なのか。
何が『自分』を揺るぎない存在としているのか。
東野圭吾氏は他の著書でも『自分』について触れているものがある。
しかし今回は異質であった。
読むのが苦痛になった瞬間もあった。
しかし、理解できないものを理解したい、その思いが次のページを開かせた。
本書をまだ読んでいない人にはぜひ読んで欲しいと思う。
そこには、流れるように叩きつける言の葉と、それでいて緻密な世界が広がっている。
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