【映画感想文】アニメ『秒速5センチメートル』【ネタバレあり】

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以前から友人にとても勧められていた映画を、やっと見ることができました。
周囲に新海誠監督のファン、たくさんいるんですよ。
なので、かなり勧められて、でも時間がなくて今まで見ることができずにいました。
やっと時間が取れたので、ゆっくりと見ました。
今実写が話題になっていますが、アニメの方ですね。
『秒速5センチメートル』

✄- – – – – – ネタバレあり – – – – – ✄
『秒速5センチメートル』は、物語そのものよりも、静かな情景とそれに寄り添う音楽が心の奥に残る映画だと感じます。
桜が舞う様子、雪の降り積もる夜の空気、列車を待つ薄暗いホーム。
それらは決して派手ではありませんが、どこか胸の奥にひそやかに触れてくるような、そんな優しい存在感を持っています。
その静寂に寄り添うように流れるピアノの旋律や、終盤の「One more time, One more chance」が、物語全体をひとつの長い詩のように結びつけていきます。

この作品は、いわゆる“ドラマチックな起伏”が大きくある映画ではありません。
むしろ、人物の心が激しく動く瞬間があったとしても、それを声高に語らず、淡々と流れる時間の中にそっと沈めてしまうような作品です。
でも、その控えめな語り方こそが、この作品の最大の魅力なのだと思います。
人の心はいつも劇的に揺れ動くわけではなく、どこかで踏ん切りがつかないまま、静かにたゆたい続けることだってある。
その「動かない心」さえも、この映画は風景と同じくらい丁寧に映し出してくれます。

距離と時間という、誰にも逆らえないものがテーマとして流れているのも印象的です。
どれだけ大切でも、どれだけ強く思っていても、互いの間に静かに積み重なっていく距離と時間は、どうしようもなく人と人を遠ざけてしまうことがあります。
それは残酷で、時に納得できない現実でもありますが、同時に多くの人が青春のどこかで味わった感覚でもあるはずです。
踏み出す勇気がなくて、あるいはすれ違いが続いて、気づけば手が届かなくなってしまった人。
そうした甘酸っぱく、そして少し苦い記憶をふと思い出させるのが、この作品の不思議な力だと思います。

また、本作は風景描写が非常に美しく、ひとつひとつのシーンが心に残る絵画のようです。
桜の花びらの落ちる速度が「1秒に5センチメートル」という設定はロマンチックでありながら、儚さの象徴でもあります。
ゆっくりと、しかし確実に落ちていく花びらは、人の気持ちも同じように少しずつ変わっていくのだと静かに語りかけてくるようです。
自然描写をここまで繊細に扱い、感情とリンクさせて表現する作品は多くありません。
その美しさそのものが、物語を包む「余白」になり、観る者に深い余韻を残します。

物語は決して大きく動きません。
そのため、派手な展開を好む人には「何も起こらなかった」と感じられることもあるでしょう。
逆に、心のひだを静かに辿るような作品が好きな人には、この映画は忘れがたい一作になるはずです。
映画としての“事件”よりも、人物のわずかな表情の変化や、選ばれなかった言葉たちの重さ、すぐには届かない想いの行方を味わう作品だからです。

観終わったあと、何が残るかは人によって大きく違うかもしれません。
けれど、この映画をひとつのポエムのように捉えると、そのゆっくりした歩みや静けさこそが美しく、心地よい余韻として感じられます。
まるで、長い手紙の最後にそっと残された空白のように、観る人の心にそれぞれ異なる言葉が浮かんでくる作品です。

『秒速5センチメートル』は、物語の結末よりも、その途中にある「感情の温度」を味わう映画だと思います。
言葉にならない気持ちが多いほど、静かな痛みが多いほど、この作品はゆっくりと心に入り込み、長く残り続けるのではないでしょうか。
静寂の美しさと、もう戻らない時間の切なさを、そっと抱きしめてくれるような優しい一本でした。

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Posted by bear-tan